0001 鉄筋の端部の処理
住宅の基礎に用いる鉄筋の端部の処理について質問があります。本によってフックをつけてある場合とつけてない場合がありますが、フックはつける必要があるのでしょうか?
また端部にフックを設ける場合、鉄筋の曲げ加工では曲げの内径が30mm以上になりますが、被り厚さに問題は生じないのでしょうか?
用いる鉄筋の種類によってフックの必要性が変わります。鉄筋に丸鋼を用いる場合、コンクリートとの付着力を高める目的でその端部にフックを設けるよう規定されています。一方異形鉄筋の場合、鉄筋の表面が凸凹で表面積が大きく、コンクリートとの付着力が大きいため、住宅の基礎などに使用する鉄筋についてはフックを設ける必要性はありません。
ご質問の内容から見ますと、ご覧になった本に使われていた鉄筋の種類がそれぞれ異なっていたのではないかと思われます。 被り厚さにつきましてはフックを被り寸法が確保できる側(型枠に沿うよう)に取り付けることで十分に確保できます。従って問題は生じません。
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0002 打ち継ぎ
べた基礎はどこで打ち継ぐのが良いのでしょうか?
建築工事仕様書(JASS5)の必要箇所を要約すると、
- 打ち継ぎの位置は構造部材の耐力への影響が最も少ない位置に定める。
- 打ち継ぎ部の形状は打ち継ぎ面が鉄筋に直角となり、構造部材の耐力の低下が少なく、コンクリート打ちこみ前の打ち継ぎ部の処理が円滑に行え、かつ新に打ち込むコンクリートの締め固めが容易に行えるような形状とする。
となっています。従ってベース部と立ち上り部との境目で打ち継ぐのが明解で良いと思います。
打ち継ぎの手順は、
@打ち継ぐコンクリートの地肌が現れるまで表面のレイタンス(カス)をハツリ取る
Aハツリ取ったカスをきれいに洗い流す
Bコンクリートの表面に湿り気がある状態にしておいてその上にコンクリートを打ち継ぐ
となります。レイタンスの除去作業を怠るとコンクリートは正しく打ち継げません。尚、ベース部と立ち上り部を同じ日に打設する場合はベース部のコンクリートを打ち込んだ後、その表面が乾燥しないうちに打ち継ぐことが肝要です。ベース部のコンクリートの上面が乾燥・硬化してしまったときには高圧の洗浄機などを用いて表面を洗い流すように水を与えてから打ち継ぐ必要があります。仕様書ではこれらの水を更に「高圧空気などを用いて取り除く」ことになっていますが、表面が乾燥し過ぎてかえって接続がうまく行かないケースもあり要注意です。
0003 ベースと立ち上りを一度で
べた基礎の立ち上り部とベース部を一緒に打設するとき、バイブレータの振動で立ち上り部に打ち込んだコンクリートがベース部から吹き出すため立ち上り部の天端が凸凹になってしまう。これを防ぐ方法は何かありますか?
ベース部からコンクリートが吹き出ないようにベース部に蓋をするとかベース部の一部にラス網を敷くなどの対策が必要です。
ベース部からのコンクリートの吹き出しをおそれてバイブレータの作業そのものを手加減しなければならないようなコンクリートの打設の仕方は誤っています。
ベース部からコンクリートが吹き出させないための方法としては、「ベース部のコンクリートを打ち込んだ後しばらく時間を置く」、「立ち上り部の打設を日を変えて行う」などが考えられます。その場合は打ち継ぎ部に当たるベース部表面のコンクリートのレイタンスを高圧洗浄機などを用いて強制的に取り除く必要があります。
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0004 アンダーセパの処理
布基礎やべた基礎でコンクリートを打つときのアンダーセパ(型枠の固定金具)は切り取った方がいいのでしょうか?
アンダーセパを切り取る作業は外観(見栄え)をよくするための丁寧な作業であって、特に必要はありません。が、アンダーセパは一般的に鋼材が使用されているため露出したまま放置すると将来は必ず錆びます。錆びる際に体積の膨張を伴うため周囲のコンクリートにひび割れを生じさせることがあります。従ってコンクリートのひび割れを危惧するのであればアンダーセパに錆びが生じないような処理を施しておく必要があります。
切り取る場合も同様、切り口をそのままにしておくと錆びるのでやはり防錆処理は必要です。
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0005 生コンの配合
コンクリートのひび割れの原因として、生コンの配合面での問題はありませんか?
あります。特に以下の2点が重要です。
@ 練り水の量 → 少ないほど良い
A セメントと水の質量比(水セメント比) → 50%以下であることが望まれる
それはこれらが大きくなるほど、コンクリート中に空隙を生じやすく、ひび割れ易いコンクリートになるためです。従って水の量が増える傾向を示す、砂量の増加、骨材の形状の悪化、骨材寸法の微細化なども同様にひび割れの要因になり得ます。一般には練り水の量が少ない生コンは、「施工しにくい」、「打設の手間が増える」などの理由で工事関係者から嫌われるため、練り水の量を減らす対策はあまり講じられていないのが実情です。練り水の量を減らす対策はひび割れを抑止する上で配合面での最大の対策となるので是非改善して欲しいものです。
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0006 海砂の使用
海砂など塩分が多い砂を使用する際に注意することは何かありますか?
コンクリートを密度の高いものに仕上げることです。海砂に含まれる塩分は、「水に溶け込むことでコンクリート中を移動し、その移動した先の鉄筋等を錆びさせる」わけですが、海砂を使用した場合でも、「コンクリートの密度を高めることで、塩分を移動させる媒体(水)を減らす」ことができれば問題は生じにくくなります。つまりコンクリートの密度を高めるための作業、つまり再振動締め固め、タンピング、表面の金ゴテ押さえ等を入念に行なうことです。また、海砂を使用してもコンクリート中に鋼材が存在しなければ問題は生じません。
高い買い物となりますが、防錆処理を施した鉄筋を使用することも対策のひとつです。
【参考】
海砂が使用されてしまう訳は川砂の枯渇と、工事単価が押さえられた結果の予算不足に起因するものですが、実は海砂ばかりでなく他の品質(目には見えにくい品質)にも犠牲が強いられています。一山500円のりんごと一個500円のりんごの質の違いに気づける様なコンクリートの品質を見極める力も培う必要があります。
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0007 収縮目地
@収縮目地(エラスタイト)はなぜ入れるのでしょうか?
A また、どうして土木(目地を入れる)と建築(入れない)で違いがあるのでしょうか?
@コンクリートは乾燥と温度による影響を受けて伸縮します。収縮目地はこの伸縮で生じるひび割れを、意図した所(構造的、意匠的に都合のよい場所)に発生させることを目的としています。
A土木構造物のコンクリートは一般的に打放しとなるため、直射日光に晒されることが多い。そのため、コンクリートの伸縮は「無視できないもの」と見なされ、目地が必要とされているのです。一方、建築構造物のコンクリートは、化粧を施すケースが多く、また「伸縮を構造的に拘束できる場合もある」などの理由で、目地が強要されていないものと思われます。なお建築構造物であっても構造物の形状や設計者の考えで収縮目地を入れているケースは少なくありません。
ところで、目地を入れていながらその横にひび割れが入るなど本来の目地の目的を果たせないケースも多々見受けられます。これは施工上で目地にひび割れが入るような工夫がなされていないことを示すものです。つまり、目地をいれる場合は、目地部のコンクリートがもっとも弱くなるように施工されるべきものが、そうなっていないということです。目地の裏側を弱くするためには目地部のコンクリートのバイブレータ作業を、最後にしかも他の部分より長めに行なうことです。なお、目地についてはコンクリートに初めから傷をつける訳ですからその傷によって鉄筋が腐食しやすいものとならない様に防錆対策は必要です。
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0008 レベラー
布基礎の天端のレベルの精度を高めるために使用するレベラーは強度的に問題はないのでしょうか?
レベラ−はセメント系の材料ですから、強度は練り混ぜる水の量に左右され、多量に使用するほど強度が低くなることが予測されます。もともとセメントは圧縮応力が強いので単にレベルを出すだけの目的であれば厚さも薄く使用することで特に問題はないと思われます。最近は型枠の上面が複雑になり、仕上げ作業がしにくくなったなどの理由で使用されるケースが増えているようですが、私自身は出来るだけコンクリートそのものでのレベル出しを勧めています。
コンクリートそのものでレベルを出す(均す)方法は打ち込んだコンクリートがまだ固まらない内にコンクリート上面から振動(叩く)を与え、上面にモルタル分を集合させて、それを指で押したとき指の跡が残るほどの固さになった時点でレベルの出ている型枠面を利用して圧し固めるように均す方法です。叩く分手間はかかりますがコンクリートを叩くことで同時にコンクリートの弱い部分(隙間が多い部分)を固めることもできるため合理的です。また、打設当日にそこまでの手が回らない時は翌日以降にコンクリートの表面を金ブラシでよくハツリとり水で洗い流し、水気の少ない固めのモルタルまたはセメントペーストをコテで押し付けながら施工します。これも上記同様手間はかかりますが目的とするレベルは容易に出せます。
一般的なことですが手間を惜しんで採用する方法 は後日ひび割れや剥がれなど後悔するようなケースが多いのでこの点よく注意することが大切です。料理を例に挙げるとよく分かりますが手間を惜しまない料理ほどおいしいものです。手間をかけることの大切さも見直して欲しい点です。
レベラ−を使用する場合は直接開発担当者などに説明を聞くなど自分自身がレベラ−の良さを引き出す正しい方法を確立する位の意気込みをもって作業をすることが必要です。新たな効果を発見できるかもしれません。
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0009 打設〜養生作業の流れ
打設、充填作業、締め固め作業、型枠の解体(脱型)、給水(給水)養生等の適正な時期及び方法とその注意点をわかりやすく説明して下さい。
生コン工場選定 |
自分の目で工場の実態を確認する。 |
生コン受け入れ |
生コン車を待機させない間隔で受け入れる。受け入れ検査は目視で可。 |
充填作業 |
生コンに振動を与え、コンクリートを型枠の隅々まで充填する。バイブレータを使用するときは常時上下に動かす。
|
締め固め作業 |
生コン充填後夏場であれば15分以上冬場なら30分以上経過したころに再振動を与える。バイブレータを口径の5倍間隔で挿入、周囲に気泡が上昇することを確認しながらゆっくりと引き抜く。 |
上面の叩き作業 |
角材などでコンクリートの表面を強く圧し叩く。人が足で踏みつけてもよい。 |
給水(保水)養生 |
コンクリートの表面に指を押し付けたとき指跡が残らなくなった時点で養生開始。工期が許す範囲でできるだけ長い期間養生する。コンクリートの露出面の固まり具合を見ながら行なう。水を弾くようになれば理想的。 |
型枠の解体 |
打設後5日以上経過した時点。ただしメタルフォームの場合は型枠の錆びがコンクリートに付着するので打設後4日目。脱型後は直ちに保水養生(シートで覆う)。 |
※コンクリートに給水(保水)養生のし過ぎはありません。この点、建物の引渡し後も施主にお願いするなどして植木に水を 与える様にコンクリートに日々水を与えてもらうことはコンクリートの乾燥収縮ひび割れを防ぐ有効な手段になります。
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0010 打設後の降雨
打設後に降雨があった場合はどのように処置すればいいでしょうか?
コンクリートの打設表面が直接雨で打たれて雨跡がつかない様クッション材(ビニールシート)を敷くなどの養生は必要です。コンクリートは露出した表面から劣化していくのでコンクリートの表面を緻密に仕上げるためにも表面の保護には留意したいものです。但し、後日その上にコンクリートやモルタルを施工する場合は雨跡が残らないので養生は不要です。打設後の降雨はコンクリートにとっての天然の給水養生と考え、有効に利用すべきです。
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0011 冬季の撒水養生
冬季におけるコンクリートの撒水養生は問題ないのでしょうか?
外気温が4℃以下の場合、単にコンクリートの上から水を撒くだけの撒水養生はコンクリートの温度を下げ凍結させる恐れがあるため問題があります。ただし凍結の恐れがあるからとの理由で、硬化初期の、コンクリートが最も水を必要としている時期にコンクリートに水を与えず乾燥させてしまうこともコンクリートにとっての大問題です。
コンクリートの撒水養生(給水あるいは保水養生)は、コンクリートの表層部におけるセメントの水和反応を確実に終了させる、 実はコンクリートの耐久性を向上させるための不可欠とも言える重要な作業なのです。
凍結の恐れがある冬季においてコンクリートに撒水養生を施す場合は、コンクリートの露出表面に溜まるほどの水を撒いた後、保温を兼ねた専用のマットですっぽりと覆ってしまうような養生が必要になります。
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0012 保水養生
保水養生についてですが、たえず水を与えなくてはならないのでしょうか?またシートで養生する場合、水を撒いてからの方がいいのでしょうか?
保水養生の理想は、冠水養生の様にコンクリートが常時水で覆われている状態です。したがって撒水する場合もコンクリートが乾かないうちに水を撒くことが大切です。以上の理由でシート養生する場合も、必ず水を撒いてから行なう必要があります。とにかくコンクリートを乾燥させない様に注意すれば乾燥収縮ひび割れは生じません。
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0013 硬化初期の異常
コンクリート硬化初期に目視チェックで異常があったときは、どのようにすればいいでしょうか?
脱型後の材齢が若いまだ硬化初期のコンクリートに、問題を発見したわけですから、基本的には給水(保水)養生をもう一度やり直すことです。水不足で枯れかかっていた樹木が水を与えることで蘇るのと同様、コンクリート中のセメント分にも新たな水和反応が起こることで自ら改善され蘇る可能性は大いにあります。
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0014 白華現象
白華現象が起きる原因は何ですか?また、対策はありますか?
白華現象(エフロレッセンス)は、硬化したコンクリートの表面に現れる現象で、まるで白い華が咲いた様に見えることから白華現象と呼ばれています。一般的にはタイルの目地等から流れ出た白く汚れる白汚現象も含んで白華現象と呼ばれていますが本当は別のものです。
原因および発生の傾向
白華現象はコンクリートの表面の出来方が不良のとき起こり安くなります。直接的な原因は型枠解体後のコンクリート露出面に対する給水養生の不足です。給水養生が不足するとコンクリートの表層付近が乾燥し、多くの隙間が生じます。その隙間から雨水などが侵入することで表層付近のセメントの可溶成分が溶出し、それがコンクリートの表面に白い析出物として現れます。一般的には施工後5〜6日後で現れます。一般に水和反応が遅い冬季に発生し易く温度の高い夏季には発生しにくい傾向があります。また水量の多いコンクリート、W/Cの大きいコンクリートも発生し易いと言えます。
対策
エフロレッセンスの成分は、発生の時期、場所、セメントや水、骨材など材料の性質によって異なると言われていますが一般的にはCaCO3、Na2CO3、Na2SO3、K2SO3などです。このうち特にCaCO3は溶解度が低いので一旦析出すると酸洗いしても取り除くことが厄介です。私が提案する水量の少ないW/Cの小さい生コンを使用すれば、発生を抑制できます。
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0015 品質チェック
打設したコンクリートの型枠取り外し後の品質状態をチェックするにはどの様な方法がありますか?
型枠取り外し後の品質状態をチェックする方法としては簡便な目視による表面観察があります。気泡の分布状態、色具合、表面を指で擦ったときの感触、指の汚れ具合の評価などは、コンクリートの出来具合から施工の仕方(の善し悪し)の反省まで含めて非常に役立つものです。また、表面の観察の他にコンクリートの露出表面をクギで引っ掻くなどして表面の固さ(硬度)をチェックする方法があります。コンクリートの表面硬度(密度)はコンクリ−トの耐久性を左右する重要な因子なのでこれを調べるのです。理想的に硬化したコンクリートの露出面はガラス質に仕上がります。ガラス質に仕上がった(密度が高い状態で固まった)場合、クギで引っ掻いても滑るような傷が付きにくい状態になります。これが理想的な状態です。また仮に傷が付く場合であってもその傷の幅が髪の毛のように細い場合は目標とした強度くらいは十分に得られているはずで
「合格」と言う様に見分けることができます。一方ガラス質に仕上がっていないと幅が広い太めの傷が付きます。この場合はコンクリートの表面の出来方が不完全なことを意味しますが、一般的にはセメントの水和反応が不足していることを示すものですから給水(保水)養生※をさらに続ける必要があります。その他にコンクリートの表面の固さを(硬度)を調べる方法としてテストハンマー(シュミットハンマー)を用いる方法があります。この方法を同一日に打込んだコンクリートの出来方を比較する目的で使用すると非常に有効です。一般的にはテストハンマーの測定結果(反発硬度)とコンクリートの圧縮強度との間に高い相関性があるので、最も反発硬度の値の小さな所からφ30〜40mm程度の小径のコアを抜き取って圧縮強度試験を実施するなどすれば構造体全体の強度を精度よく判定することも可能です。
※給水(保水)養生
給水養生を行う期間の目安としては、コンクリートの露出表面が緻密に仕上がるまで、即ちガラス状に仕上がるまでとするのがコンクリートにとっての理想です。理想的な期間養生を行うと、型枠(鋼製か塗装を施した型枠)解体後のコンクリートの表面に降り注いだ雨がコンクリート中に吸い込まれず、表面に流れ落ちる様な仕上がり方になります。特に新鮮なセメントを使用し、水セメント比が50%以下、セメント量が350kg/m3以上の場合は、表面の硬度がH8を超えるような非常に強固なものに仕上がります。
ところが現実にはそれらの仕上がりを期待できません。何故なら、養生及び型枠の存置等の期間が、コンクリートの強度に重点がおかれ求められているためで、一般的には強度が高いほど養生期間並びに型枠の存置期間が短縮されているためです。従ってセメント使用量の多いコンクリートほど脱型後の給水(保水)養生が短縮され、その結果、水和反応が未熟なひび割れ易いコンクリートができてしまうのです。セメント量が多いほどひび割れ易い云々は実は養生不足等に起因した話なのです。要するに、養生の方法については様々な条件を加味し考慮して決める必要があると言う事です。
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0016 ひび割れの生じ易いところ
コンクリートのひび割れはどういったところに生じ易いのでしょうか?
ひび割れが生じ易いのは
・応力が大きいところ、
・歪み量や伸縮量が大きいところ、
・コンクリートの充填がしっかり行えていない密度が小さいところ
等で、要は「他の部位より条件が悪いところ」、「コンクリートが弱いところ」です。具体的に言えば、直射日光が当たる南面、常に衝撃を受けるドアの近辺、角部の内側、開口部の真ん中の辺、等がひび割れ易いといえます。
これらのひび割れはすべてと言っても過言でないほど抑制対策を施工上で講ずることが可能なので、あらためてコンクリートの立場から造り方を見直す必要があります。
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0017 許容ひび割れ幅
構造的に問題なく、「補修をしなくてもよい」とされる、ひび割れ幅の許容範囲はどれくらいですか?
構造的に許容されるひび割れの幅寸法として、0.15,0.20,0.25mmなど研究者によって様々な説がありますが、これらのひび割れ幅までは補修しなくてもよいと見なす考え方が主流です。
私の補修に関する考え方は違います。私は、1mくらい離れた所から目視で確認出来るようなひび割れは、その幅に関係なく、すべて「補修の対象」になると考えています。その理由は、「ひび割れ幅が成長しないひび割れをいまだに見たことがない」からで、しかも「ひび割れが細いうちであれば、予測される被害を小さく押さえることが出来る」ためです。とにかく、ひび割れは、細いから「補修をしなくてもよい」わけではなく、発見したものはすべて埋めるべきだと思います。
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0018 布基礎縦方向のひび割れ
布基礎の縦方向に入るひび割れの原因は何ですか?
主としてコンクリートの乾燥に起因するひび割れだと思われます。具体的には以下のようなことが考えられます。
・硬化に不要な水を多く含んだ軟らかい生コンを使用した。
・型枠に打ち込んだ後に、硬化に不要な水を外に追い出す作業(締め固め、叩き、加圧など)が不足した。
・型枠解体後の給水(保水)養生が不足した。
コンクリートは密実に打ち込み、表面をガラス質に仕上げることが肝要です。
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0019 ひび割れ対策とコストアップ
ひび割れ防止の提案がコストアップにつながってしまっては、その提案は結局採用されないのではないでしょうか?
ひび割れを防止することが最大の目的であってコストアップは次の問題です。ひび割れてからそれを補修することにお金を掛けるか、ひび割れを予防することにお金を掛けるかはお金の掛け方についての考え方の違いです。
私の試算ではひび割れが生ずるとその原因調査を含め補修に至るまでに掛かる費用として少なく見積もっても数十万円以上、場合によっては百万円を超えるような出費があります。
この様な観点で考えると十万円程度の施工時の出費は逆に安いと言うことにもなります。ひび割れに対する苦情が頻発している今日、工事に必要な予算までも削減しては元も子もありません。新たな建設費としての予算の計上が困難であれば『当社では他社に先駆けてひび割れの防止対策の一環としとして・・・をしています』など顧客の信頼を勝ち取るための有効なセールストークとしての宣伝費で計上すれば新たな予算も無理なく捻出できるはずです。要は品確法の本当の精神に基づいた企業姿勢の問題です。
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0020 中性化
コンクリートはどうして中性化するのですか?また、どうすれば中性化を抑制できますか?
コンクリートは、材料のひとつであるセメントが水と反応(水和)することにより硬化するのですが、そのセメントの水和により水酸化カルシウムCa(OH)2
が生成します。コンクリートの中性化は、水酸化カルシウム(水溶液はアルカリ性を呈す)が化学的に不安定なために起きる現象です。具体的には、炭酸ガス、排気ガス、酸性雨などと反応し、炭酸塩や硫酸塩などの安定したカルシウム塩(水溶液は中性)が生成する現象です。
アルカリ性が失われることで鉄筋の防錆能力が失われるため、中性化の度合いに応じてコンクリートが劣化したと見なされます。なお中性化現象はコンクリートの表面から起こるので、コンクリートの表面を緻密に仕上げることが有効な中性化の防止対策になります。
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0021 中性化防止のための塗装
コンクリートの中性化防止(鉄筋の腐食防止)を目的とした、コンクリート表層部に対するモルタル等の塗装は、立ち上がり部の裏側(通常は隠れてしまって見えないところ)にも必要でしょうか?(コスト面を考えて)
お答えする前にコンクリートが中性化するとコンクリートが脆くなる(強度が低下する)と誤解されている方が多いようなのでコンクリートの中性化について簡単に説明致します。
コンクリートはその主成分であるセメントのために強いアルカリ性を呈します。強アルカリの環境下では鉄筋は酸化皮膜で覆われ、錆びにくい状況にあります。
一方コンクリートのアルカリ性は空気中の炭酸ガスや雨(酸性雨)などと接触することで徐々に失われていきます。これがコンクリートの中性化です。
コンクリートの中性化の問題点は、高濃度のアルカリ性が失われることで鉄筋を化学的に錆から守れなくなること。要は鉄に塗っておいた錆止めがはがれたのと同じことで鉄筋が錆び易くなります。しかし、鉄は塩+水に支配された環境下に置かれない限り急激に錆びることはないので、鉄筋が直ちに錆びてボロボロになることもなく、従って構造的に直ちに脆くなる訳ではありません。
実は炭酸化(中性化)の進んだコンクリートの方がかえって表面の硬度が増す程で、コンクリートが中性化したからと言って強度が弱まることではないのです。あくまでも単に鉄筋の防錆機能が低下するだけのことです。
ところでこのコンクリートの中性化現象はコンクリートが露出しているすべての面で起こります。従って鉄筋コンクリートの場合その露出面全体に中性化防止のための塗装は必要ですが、鉄筋の防錆(塩+水を遮断する)の観点に立てば『水がない乾燥状態におかれた鉄(鉄筋)は錆びにくい』訳で、雨の当たらない(水が供給されない)建物の内側(裏側)面についての塗装は省略しても特に支障はないと考えられます。
これらの理由で内側(裏側)についての塗装を省略することでの建設コスト低減は可能です。
但し、内側についての塗装を省略することで施主から手抜き工事と誤解されないよう着工前に省略する理由についてよく説明しておくことが肝要です。
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0022 モルタルの水セメント比
モルタルにおける水セメント比の適正値(学会的数値)はありますか?
特に学会的数値はありませんが、モルタルの主原料もセメントですからコンクリートの性質と同様に考えてよいと思います。少ない水で練り混ぜ、水セメント比を50%以下とし、固まった後は十分に給水養生することです。
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0023 外壁モルタルのひび割れ防止
外壁モルタルのひび割れ防止対策はありますか?
モルタルは多量のセメントが使用されています。従ってひび割れの防止対策はコンクリートと全く同様です。施工後の保水養生が非常に大切です。
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0024 モルタルのハケ仕上げ
何故、布基礎の立上り部に、モルタルのハケ仕上げをするのですか?
ハケ仕上げはモルタルの仕上げの見栄えをよくする、口悪く表現すれば下手な作業を隠す、色の違いを分かりにくくするなどの目的で行なっているものと思われます。基礎の立上り部をハケ仕上げすると土の汚れがこびり着くなどして後日かえって汚れが目立つことになりますし、その汚れは落としにくいものとなるため得策とは言えません。
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